建設汚泥処理土 利用技術基準が策定された経緯
建設汚泥の再資源化率が極めて低い水準にとどまっていた平成前期から中期、産業廃棄物の最終処分場がひっ迫し、建設汚泥の最終処分量をいかに削減するかが緊急の課題となっていました。また、建設汚泥を含む建設廃棄物の不法投棄問題が全国各地で発生し看過できない状況でした。
参考コラム:建設汚泥の再資源化率ランキング(国内)
「アスファルトや建設発生木材と比較すると、建設汚泥のリサイクル率は低い」
このような状況を改善するため、平成17年(2005年)6月に学識経験者、建設業界、産業廃棄物処理業界、地方自治体、環境省及び国土交通省等の関係者をメンバーとする「建設汚泥再生利用指針検討委員会」が発足し、建設汚泥の再生利用、適正処理を推進するための具体的施策について検討が行われました。
その後、それらの内容が「建設汚泥の再生利用に関するガイドライン」、「設汚泥処理土利用技術基準」として策定され、平成18年(2006年)3月に国土交通省から通知されるに至りました。
これまで曖昧だった建設汚泥の再生利用に関する基準が、国土交通省から明確に提示されたことで、国内における建設汚泥の再生利用の促進と適正処理の推進に向けて、大きく前進することになりました。
建設汚泥の再生利用に関するガイドライン等を策定しました(平成18年6月12日)国土交通省
http://www.mlit.go.jp/kisha/kisha06/01/010612_.html
建設汚泥処理土 利用技術基準の目的と留意事項
1.目的
本基準は、建設工事に伴い副次的に発生する建設汚泥の処理土の土質特性に応じた区分基準および各々の区分に応じた適用用途標準を示すことにより、建設汚泥の適正な再生利用の促進を図ることを目的とする。
2.適用
本基準は、建設汚泥を建設資材(土質材料等)として盛土等に再生利用する場合に適用する。なお、環境基本法に基づく土壌環境基準および土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の含有量基準に適合しないものは、本基準の対象外とする。
3.留意事項
本基準を適用し、建設汚泥を再生利用するに当たっては、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」(以下「廃棄物処理法」)等の関係法規を遵守し、特に生活環境の保全に留意しなければならない。
4.建設汚泥の定義
「建設工事に係る掘削工事から生じる泥状の掘削物および泥水のうち廃棄物処理法に規定する産業廃棄物として取り扱われるもの」を建設汚泥という。この場合、建設汚泥は産業廃棄物のうち無機性の汚泥として取り扱われる。建設汚泥に該当する泥状の状態とは、標準仕様ダンプトラックに山積みができず、また、その上を人が歩けない状態をいい、この状態を土の強度を示す指標でいえば、コーン指数がおおむね 200kN/㎡以下または一軸圧縮強さがおおむね 50kN/㎡以下である。なお、地山掘削に伴って生じる掘削物および浚渫土については、土砂および土砂に準ずるものでり、廃棄物処理法の対象外である。
建設汚泥処理土の品質区分基準
1.品質基準および確認方法
(1)品質区分
建設汚泥処理土(建設汚泥に各処理等を行い、その性状を改良したもの)を土質材料として利用する場合の品質 区分は原則としてコーン指数を指標とし【表-1】に示す品質区分とする。
【表-1】建設汚泥処理土の土質材料としての品質区分と品質基準値
区分 | コーン指数qc(kN/㎡)※1 | 備考 |
---|---|---|
第1種処理土 | - | 固結強度が高く礫、砂状を呈するもの |
第2種処理土 | 800 以上 | |
第3種処理土 | 400 以上 | |
第4種処理土 | 200 以上 |
※1 所定の方法でモールドに締め固めた試料に対し、コーンペネトロメーターで測定したコーン指数(【参考表-A】参照)
(2)品質区分判定のための確認方法
建設汚泥処理土の品質確認に当たっては、利用用途ごとに設計図書で規定された要求品質区分への適合等を確認するものとする。なお、第2種から第4種処理土の品質判定のための試験は【表-2】に示す方法で行うことを標準とする。
【表-2】建設汚泥処理土の品質判定のための調査試験方法
判定指標 | 試験項目 | 試験方法 | 頻度 |
---|---|---|---|
コーン指数 | 締固めた土の コーン指数試験 |
JIS A 1228に準拠 ※2 |
1日の処理量が200㎥を超える場合、 200㎥ごとに1回、 200㎥以下の場合、1日に1回 |
※2 試料は処理土を一旦ときほぐし9.5mmふるいを通過させたものとする。
【参考表-A】建設汚泥処理土のコーン指数(qc)の試験方法
供試体の作製 | |
---|---|
試料 | 処理土を一旦ときほぐし9.5mmふるいを通過させたもの※3 |
モールド | 内径100±0.4mm 容量1,000±12c㎥ |
ランマー | 質量 2.5±0.01kg |
突き固め | 3層に分けて突き固める。各層ごとに30±0.15cmの高さから25回突き固める |
測定 | |
---|---|
コーンペネロメーター | 底面の断面積3.24c㎡先端角度30度のもの |
貫入速度 | 約1cm/s |
方法 | モールドをつけたまま、鉛直にコーンの先端を供試体上端部から5cm、7.5cm、10cm貫入した時の貫入抵抗力を求める。 |
計算 | |
---|---|
貫入抵抗力 | 貫入量5cm、7.5cm、10cmに対する貫入抵抗力を平均して、 平均貫入力を求める。 |
コーン指数(qc) | 平均貫入抵抗力をコーン先端の底面積3.24c㎡で除する。 |
※3 JIS A 1228の土質試験方法と異なるので注意
2.生活環境保全上の基準および確認方法
生活環境保全上の基準については、環境基本法に基づく土壌環境基準(溶出量基準)に加えて有害物の含有量基準とする。ここで、含有量基準については、土壌汚染対策法に基づく特定有害物質の含有量基準に準ずるものとする。建設汚泥処理土の利用に当たっては、建設汚泥処理土が上記の基準を満たしていることを分析証明書等で確認するものとする。
建設汚泥処理土の適用用途標準
処理土の利用用途は、土質区分に基づき、表-4に示す適用用途標準を目安とする。現状の処理土の土質区分基準では、利用用途に対して○および△に該当する場合は、相応の土質改良を行うことにより◎に該当するものとして利用する。なお、本適用用途標準はあくまで目安であり、実際の施工に当たっては個々の利用用途によって詳細に規定されている品質および施工管理に関する基準に従い利用するものとする。
【表-4】建設汚泥処理土の適用用途標準
適用用途 | 工作物の埋戻し | 建築物の埋戻し※4 | 土木構造物の裏込め | 道路用盛土 | 河川築堤 | 土地造成 | 鉄道盛土 | 空港盛土 | 水面埋立て※5 | ||||||||||||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
路床 | 路体 | 高規格堤防 | 一般堤防 | 宅地造成 | 公園・緑地造成 | ||||||||||||||||||||
評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | 評価 | 留意事項 | ||
第1種処理土 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒注意 礫混入注意 透水性注意 表層利注意 |
○ | ◎ | 最大粒径注意 礫混入率注意 表層利用注意 |
◎ | 表層利用注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 最大粒径注意 | ◎ | 淡水域利用 注意 |
||
第2種処理土 | 処理土 | ◎ | 細粒分 含有率注意 |
◎ | ◎ | 細粒分 含有率注意 |
◎ | ◎ | ◎ | 粒度分布注意 | ◎ | 粒度分布注意 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 粒度分布注意 | |||||||
改良土 | ◎ | ◎ | 表層利用注意 | ◎ | ◎ | ◎ | ◎ | 表層利用注意 | ◎ | 表層利用注意 | ◎ | 表層利用注意 | ◎ | 表層利用注意 | ◎ | ◎ | ◎ | 淡水域利用 注意 |
|||||||
第3種処理土 | 処理土 | ○ | ◎ | 施工機械の選定注意 | ○ | ○ | ◎ | 施工機械 の選定注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 粒度分布注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 粒度分布注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 |
○ | ◎ | 施工機械の選 定注意 |
◎ | |||||
改良土 | ○ | ◎ | 施工機械の選定注意 表層利用注意 |
○ | ○ | ◎ | 施工機械 の選定注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 表層利用注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 表層利用注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 表層利用注意 |
◎ | 施工機械の 選定注意 表層利用注意 |
○ | ◎ | 施工機械の 選定注意 |
◎ | 淡水域利用 注意 |
|||||
第4種処理土 | 処理土 | △ | ○ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ◎ | ||||||||||||
改良土 | △ | ○ | △ | △ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ | ◎ | 淡水域利用 注意 |
※4 建築物の埋戻し:一定の強度が必要な埋戻しの場合は、工作物の埋戻しを準用する。
※5 水面埋立て:水面上へ土砂等が出た後については、利用目的別の留意点(地盤改良、締固め等)を別途考慮するものとする。
処理土と改良土の違い
- 処理土:建設汚泥を処理したもの。
- 改良土:処理土のうち、安定処理を行ったもの。
凡例:[評価]
- ◎:そのままで利用が可能なもの。留意事項に使用時の注意を示した。
- ○:適切な処理方法(含水比低下、粒度調整、機能付加、安定処理等)を行えば使用可能なもの。
- △:評価が○のものと比較して、土質改良にコストおよび時間が必要なもの。
土質改良の定義
- 含水比低下:
水切り、天日乾燥等を用いて含水比の低下を図ることにより利用可能となるもの。含水比低下 - 粒度調整:
利用場所や目的によっては細粒分あるいは粗粒分の付加やふるい選別を行うことで利用可能となるもの。 - 機能付加:
固化材、水や軽量材・補助工法等を混合や敷設することにより処理土に流動性、軽量性・耐久性などの付加価値をつけることにより利用可能となるもの。 - 安定処理等:
セメントや石灰による化学的安定処理や高分子系や無機材料による土中水分の固定を主目的とした改良材による土質改良を行うことにより利用可能となるもの。
留意事項
- 最大粒径注意:
利用用途先の材料の最大粒径、または1層の仕上がり厚さが規定されているもの。 - 細粒分含有率注意:
利用用途先の材料の細粒分含有率の範囲が規定されているもの。 - 礫混入率注意:
利用用途先の礫混入率が規定されているもの。 - 粒度分布注意:
液状化や土粒子の流出などの点で問題があり、利用場所や目的によっては粒度分布に注意を要するもの。または利用用途により粒度分布の範囲の規定があるもの。 - 透水性注意:
透水性が高いため、難透水性が要求される部位への利用は適さないもの。 - 表層利用注意:
表面への露出などで植生や築造等に影響を及ぼすおそれのあるもの。 - 施工機械の選定注意:
過転圧などの点で問題があるため、締固め等の施工機械の接地圧に注意を要するもの。 - 淡水域利用注意:
淡水域に利用する場合、水域のpHが上昇する可能性があり、注意を要するもの。
出典:建設汚泥処理土利用基準(平成18年6月12日)国土交通省
http://www.mlit.go.jp/tec/kankyou/hasseido/pdf/odeisyorikijyun.pdf
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